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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)639号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人林徹の上告理由第一点について。

原審の認定した事実によれば、本件が自創法施行令一条三号の、「昭和二十年八月十五日以前の召集」に該当しないことは所論のとおりである。しかし、右事情の下では、被上告人は、買収基準日当時やむを得ない事由のため一時的に不在であつたのであつて、右事由のやみ次第元の住所への復帰が期待される状況にあつたものと認むべきであり、かような場合は、同令一条四号の「その他の事由」がある場合に当るものと解するのが相当である。そして、客観的に右事由が存在する限り、市町村農業委員会は、都道府県農業委員会の承認を経て右地主を在村地主として取り扱うべきであり、これをしないで買収の挙に出ることは違法と解すべきである(昭和二七年(オ)第八五五号、同二八年一二月二五日第二小法廷判決、集七巻一三号一六六九頁参照)。原審の判断も右と同趣旨に出たものと解すべきであつて、論旨は採用に値しない。

同第二点について。

自創法五条六号の一時賃貸の小作地について、客観的に賃貸人が近い将来自作農となるものと認められ、かつその自作化が相当とされる事情が認められる限り、市町村農業委員会は、右小作地を買収より除外すべきであり、これをしないで買収の挙に出ることは違法と解すべきである。右と同趣旨に出た原判決は正当であり、論旨は採用し得ない。

同第三点について。

所論は、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律(昭和二五年法律第一三八号)所定の適法な上告理由に当らない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克)

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